有峰湖周辺(富山) 大坂森山(1792.1m)、鉢伏山(1781.7m) 2018年4月28〜30日  カウント:画像読み出し不能

所要時間
4/28 4:34 亀谷ゲート−−5:33 新真谷トンネル−−5:58 新鬼ヶ城トンネル−−6:27 新ニンニクトンネル−−6:39 トンネル出口で休憩 7:12−−7:35 東坂森トンネル−−7:54 新坂森トンネル−−8:29 有峰ダム分岐(休憩&荷物デポ) 9:22−−9:40 遊歩道入口−−10:16 1338標高点−−10:53 1518.4m三角点峰−−11:42 1635m峰(休憩) 12:27−−12:36 1668m峰−−13:12 大坂森山(休憩) 14:07−−14:24 1668m峰−−15:11 1518.4m三角点峰−−15:26 1338標高点 15:30−−15:49 遊歩道入口 15:55−−16:08 有峰ダム分岐 16:22−−16:30 幕営地

4/29 5:23 幕営地−−5:26 林道(有峰ダム)−−5:36 林道小口川線分岐−−6:10 西坂森谷−−6:29 標高1230m林道カーブ−−6:55 林道(標高1350m)−−7:10 1420m(アイゼン装着) 7:21−−7:37 1500m肩−−8:36 1702m峰(アイゼン&ピッケルをデポ)−−9:10 鉢伏山(休憩) 10:25−−10:47 1702m峰−−11:14 1500m肩−−11:23 林道(標高1350m)−−11:34 標高1230m林道カーブ−−11:43 西坂森谷−−11:50 休憩 12:18−−12:43 林道小口川線分岐−−13:00 幕営地

4/30 4:22 有峰ダム−−4:49 新坂森トンネル−−5:00 東坂森トンネル−−5:20 新ニンニクトンネル−−5:37 新鬼ヶ城トンネル−−5:50 新真谷トンネルーー6:47 亀谷トンネル−−6:53 亀谷ゲート


場所富山県富山市(旧大山町)
年月日2018年4月28〜30日 2泊3日幕営
天候連日の晴れ
山行種類残雪期の籔山
交通手段マイカー
駐車場亀谷ゲートに駐車場有
登山道の有無大坂森山:無し 鉢伏山:別ルートなら夏道あり(登山時は知らなかった)
籔の有無大坂森山:残雪でほぼ藪無し  鉢伏山:雪解けが進んで根曲がり竹が出てしまった区間あり
危険個所の有無無し
冬装備ピッケル、アイゼンを持っていったが使用機会無し。ただし残雪状況によっては林道通行で必要になる可能性あり。ワカンは最初から持たなかったが必要なかった
山頂の展望大坂森山:東側が開ける 鉢伏山:360度開けるが平たい山頂なので遠くの山しか見えない
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コメント冬季通行止中の有峰林道亀谷線を徒歩で入り(往復約26km)、有峰ダムをベースキャンプとして大坂森山、鉢伏山を往復。亀谷線は有峰ダムまで除雪済みだったが小口川線は未除雪で、斜面取り付きまでの区間の1割くらいを雪の上を歩いたが危険箇所は無かった。今年は雪解けが早く残雪の賞味期限切れギリギリで一部雪が消えて潅木藪漕ぎだったが短距離で済んだ。どちらの山も概ね緩やかな尾根が続き危険箇所は無く傾斜が緩い場所は残雪あり。鉢伏山山頂には山頂標識があったのには驚いた


地図クリックで等倍表示
1日目のルート断面図(亀谷ゲート〜有峰ダム〜大坂森山〜有峰ダム)
2日目のルート断面図(有峰ダム〜鉢伏山〜有峰ダム)
3日目のルート断面図(有峰ダム〜亀谷ゲート)


亀谷ゲートは冬季閉鎖中 ゲート横の駐車場。車無し
各谷には有峰ダムまでの距離が書かれている 長いトンネルではライトが必要
途中で休憩 林道は除雪されている(ほとんど雪は無いが)
有峰ダム分岐のゲート。半分閉じている 有峰ダム分岐
フキノトウがいっぱい ダム湖岸に案内標識
眼下の平坦地に幕営した 有峰ダム解説
有峰ビジターセンター付近はほとんど雪は無い 遊歩道入口は地形図通りの場所にあった
1338m標高点目指して登る 送電線登場
1338m標高点のポール。道はここまで どうにか雪がつながっているようでラッキー!
尾根直上は藪が出ているので北斜面をトラバース 雪を求めて谷筋を登る
1480m鞍部から尾根に乗る(1510m肩) 1460m鞍部付近は雪が落ちて灌木藪
1560m付近。この先で雪が来れてしまう ネズコと笹の藪を進む
北側に雪を発見、迂回 1610m付近。この先は藪は無い
1635m峰で休憩
1690m付近から見た大坂森山
1760m付近 大坂森山山頂。背景は薬師岳
大坂森山から見た立山〜薬師岳
大坂森山から桑崎山へ続く尾根 1338m標高点に戻る
有峰ビジターセンター到着。ここで水を汲んだ 今夜の宿。雪無し平坦地の一等地
テント設営 2日目朝。まずは有峰ダムへ下る
この階段で林道に出た 有峰ダム堰堤
小口川線入口。この先は未除雪 でも林道縁の雪はほぼ消えていた
1510m峰北斜面のみ林道全面が雪の下 西坂森谷を渡る橋
右ヘアピンカーブで斜面に取り付く かろうじて残雪あり
谷筋の雪もここまで でも藪は薄かった
林道を横断(標高1350m) 上部の斜面の雪も少ない
笹は思ったより薄い できるだけ雪を繋がて登る
標高1480mでやっと雪がつながる 西側の1689m峰の反射板
正面は1567m峰 1628m峰を避けて西側の谷へ
1550mで谷に降りる 1630m付近
1702m峰南鞍部 1702m峰deえアイゼン、ピッケルをデポ
鉢伏山めざし北上 笠ヶ岳
乗鞍岳 木曾御嶽
先週登った東笠山、西笠山 シラビソが目立ってくる
1760m峰 鉢伏山山頂
山頂標識があってびっくり(夏道ありだった)
鉢伏山の360度パノラマ写真。のっぺりしていて意外と遠くが見えない
山頂東縁から見た立山〜薬師岳
1760m峰から見た西笠山方面
往路を戻る 往路の谷かと思ったら1本西側を下ってしまった
計画より下で谷に出たので東の尾根に登り返し 林道を横断
往路のヘアピン付近で林道に合流 西坂森谷の橋を渡った少し先だけ雪の斜面
休憩 対岸には小見線。ほぼ雪無し
有峰ダム マイテント遠望
テント場に登る斜面もフキノトウだらけ 本日もここで幕営
3日目。テント撤収 林道には小規模な雪崩
ゲート到着 車は駐車場ではなく日陰に置いた


 有峰湖周辺には登山道が無い山がいくつもあり、標高が高いこともあって残雪期に登りたい山ばかりだが、昨年の丸山でも判明したとおりに林道が開通するのは6月初旬であり、山頂付近のみ残雪はあっても大半の区間が藪漕ぎとなってしまう時期だ。藪漕ぎ覚悟で入ってもいいが、近年は私の体質は笹アレルギーが酷くなってきて藪漕ぎの後は猛烈な痒みを伴う発疹が腹回りにできるようになり、飲み薬や塗り薬を使用しても完治まで1週間はかかる状態になってしまう。あまり体験したくない事態であり、できれば藪が深い場所は雪に埋もれた時期に登りたいと強く思うのだった。

 そこで今年の大型連休は大坂森山に向かうことにした。その前の週に飛騨側から東笠山、西笠山に登った際の風景で、まだ有峰湖周辺は残雪が期待できそうだと思ったからだ。コースは鍬崎山経由での往復。これなら標高的には充分高いので藪はほぼ回避できるだろうが、鍬崎山から標高差400mを下って100m登り返すという非効率的なコースである。累積標高差を計算すると2000m近くあり私の体力では日帰りギリギリで、リスクを考慮して1泊が安全だ。

 最初は上記コースで固まっていたのだが、好天が4日間も予想されている連休初頭で1泊の行程はもったいないと考えるようになった。全く別の山も考えたが、やはり大坂森山が一番気になる。そこで地図をよ〜く見て決断。長い有峰林道有峰線を歩いて有峰ダムに至り、ここにテントを張ってベースキャンプとして大坂森山と鉢伏山を合わせて片付けてしまおう。これなら余計な登りは不要になり、ある意味で効率的だ。しかも1泊追加で鉢伏山も登れてしまう。鉢伏山も登山道があるとは聞いたことが無いのでこの時期に登るのは理想的だ(帰宅後にネット検索したら鉢伏山には夏道があったのだった・・・・)。ついでにテントを担いだまま縦走するのではなくベースキャンプから先は軽装で往復できるので、深残業続きで過労気味の体でも優しい計画。昨年の銀山平から平ヶ岳奥地周回のような体力の限界に挑戦するような無茶な計画ではないので途中棄権のリスクも低いだろう。

 心配なのは冬季閉鎖中の有峰林道に歩きでも立入可能かどうかだが、ネットで検索すると1週間前に有峰林道を自転車で上がって折立から薬師岳を往復した最新記録を発見。それによると立入禁止の表示はないらしいし、なんと林道は除雪済みとのこと。これなら安心して入れる。ただし地図上の計測では有峰ダムまで約14kmあり標高差は約700mほどある。おそらく登りは5時間近くかかるだろう。可能なら初日で大坂森山往復まで実行したいが、もしダメなら初日はダムで幕営し、翌日はより遠い(片道約10km)鉢伏山を往復し、最終日に大坂森山を往復して(片道5km弱)林道を歩いて亀谷ゲートに下山と考えた。

 今シーズン初めての幕営なので準備に手間取った。ガスは雪を溶かすための多めに準備。防寒装備は今回の幕営地の標高が約1100mとやや低いため、昨年よりも上下とも減らした。実際には夜中の最低気温は+6℃くらいもあってもっと減らしても問題ないくらいだった。昨年は使い捨てカイロも持ったが今年の春の気温からして今回は不要と判断した。食料は重くなるが余裕を見て多めに持つことにした。冬装備はどこまで持つか悩んだが、ピッケルと10本爪アイゼンとした。地形図を見た感じではどちらも不要な可能性があったが最も心配なのが林道小口川線で、ここは除雪されていない可能性が高く、北側斜面を回り込む区間で雪に埋もれて斜面と同じ雪の急斜面と化している可能性がある。残雪期の最も危険箇所が林道歩きというのはよくあるパターンなので、備えておいた方がいいだろう。

 長野から林道ゲートまで、全て一般道で道のりは約180kmだった。先週は飛騨側から有峰湖周辺に入ったが今週は富山側からで距離が伸びたが東京から通った頃を考えるとずっと近く、長野から谷川岳周辺に行くのと同じくらい。白馬から姫川沿いを下り糸魚川で国道8号線に入って西へ。富山平野に入ってからはスーパー農道経由で立山川沿いに至り林道入口ゲートに到着。当然ながらゲートは施錠され料金所は無人。駐車場も車は皆無。連休中にここから入山する人は私の他にもいるだろうか。

 翌朝、まだ薄暗い時刻に出発。大ザックの幕営装備、しかも重い冬装備を担ぐのは約1年ぶりなのでずっしりと重い。おまけに残業続きの寝不足で頭も体も重く、先行きが思いやられる。どうにかライトが無くても大丈夫なギリギリの明るさだがいきなりトンネルでライトが必要になる。この後もいくつも長いトンネルがあるのでヘッドライトは必須だ。最も長いトンネルは1.5kmもあるので平地で歩いても20分はかかるがここは上り坂なのでもっとかかる。トンネル通過で使うライトの電池量も馬鹿にならないため、今回は予備電池2本を準備した(結果としては翌朝の寝坊もあって予備は使用しなかった)。道路はきれいに除雪されているがあちこちに小さな落石が散らばっている。トンネル内の照明は切れたままなので真っ暗け。トンネル内は冬場に撤去された標識類が積み上げられていた。大きな谷には谷の名称と有峰ダムまでの距離が書かれた標識があり、林道歩きの残距離把握に大いに役立った。

 長い林道歩きの途中で1回の休憩。無人の林道を通行する人はもちろん車も皆無だ。平日なら関係者の車が上がってくることもあるかもしれないが、土日休日の3連休ではそれもないだろう。

 周囲のブナは麓では既に若葉が青々としているが標高が上がるに連れて芽吹きが遅くなり、有峰ダム周辺ではまだ芽吹いていなくなった。でも周囲の斜面にはほとんど残雪は見られず、あわよくば大坂森山は適当な谷筋から残雪を伝って1518.4m峰へ突き上げようかと思っていたが、斜面はもちろん谷筋の雪もほとんど無くてそれは無理だった。計画で1338m標高点へと南斜面から破線が上がっているのでこれを利用しようと考えていたが、この状況では南斜面なので雪は残っていないだろう。破線どおり道があればいいが無ければ最初から藪漕ぎ確定だ。あったとしても1338mより上は道は無いので、ここで雪が残っていなければやっぱり藪漕ぎだ。ただ、1338mより上で傾斜が緩むために残雪がある確率は傾斜がある斜面よりは高いはずだ。さて、残っているだろうか。

 有峰ダムへ下る道と折立方面への道の分岐に到着。それなりに疲れたがまだ時刻は10時前で大坂森山を往復するには充分な時間的余裕はあるだろう。明日の鉢伏山を考えるとここで幕営するのがベストなのでここで荷物をデポすることにした。やっとここで肩の荷が下りていつもの日帰り装備にチェンジだ。周囲には幕営に適した地面が露出した平地は無く、大坂森山から下山後に水場と合わせて探すことにしてまずは大坂森山に向かうことにした。荷物は大型ビニール袋に詰めて半分開いた門の袂に目立たないように置いた。防寒装備、アイゼン、ピッケルを持っていくか悩んだが、万が一の事態を考慮して持って行くことにした。特にこの天気では防寒装備は不要な可能性は高いが、山の上で風が吹いていた場合は休憩時に必要だろうとの判断だ。しかし当面の暑さ対策で麦藁帽子も持っていく。これがないと暑いし酷く日焼けするだろう。

 林道が大きくカーブする箇所に有峰湖を見下ろす展望台があり、そのすぐ下に平坦な草付きの場所を発見。幕営地に最適だ。戻ってきたらこちらに移動してテントを張ろう。

 地形図の破線起点の有峰ホテル周辺はほとんど雪は残っておらず駐車場にもほとんど雪が無い。見上げる斜面も雪は皆無。ここで地形図の道が無いと最初から藪漕ぎになってしまうのでマジになって地形図を読んで道を探す。地形図によると林道北側に最初に登場する建物の裏側が起点のはずで、まだ雪囲いされた建物の横を通って雪解け水の流れを跨ぐと遊歩道入口を発見! よかったぁ、これで当面の藪漕ぎは回避だ。

 遊歩道は立派な刈り払いで今でも現役なのが分かる。近くの木には名札が下がっているが知らない木の種類が多かった。平らな場所では雪が残っているが大半では雪は見られず心配になる。ただしまだこの標高ではそれほど藪は濃くないのが幸いだ。先週は標高1300mで雪が現れだしたが今週はどうだろうか。1250mで尾根に出ると送電鉄塔あり。遊歩道は送電線巡視路兼用らしい。

 1338m峰にはカラフルな縞々模様のポールが立っていて、ここから遊歩道は下っていってしまうが、幸いにも傾斜が緩んだこの小ピークには雪が切れ切れに残っていた。何とかこの先もこの程度でも残っていてくれれば・・・と願うばかりだ。

 尾根直上は雪が残っていないので北側を巻いて進んでいくとかろうじて切れ切れに雪が残っていた。しかし標高1400mを越えて傾斜が出てくると尾根北側も雪が消えて藪が出てしまっている。しかしここからは北側を上がってくる谷筋に雪が詰まっていて藪が回避可能で谷に下りてそのまま谷を詰めることにした。このまま上がると1518.4m峰西側の1480m鞍部に出るが、その先は傾斜が緩むので残雪が続くことを期待しよう。雪の上にはカモシカの新しい足跡があちこちにあったが、1頭だけその姿を見ることができた。

 結局、1480m鞍部までずっと雪が繋がってベストなルートだった。鞍部に上がって尾根上に出るとこれまた雪が繋がってくれていて難なく1518.4m峰に到着。これでもまだ大坂森山までの1/3程度か。いつもなら楽勝の距離だが大ザックを背負った長い林道歩きの後なので足が重い。山頂まで無休憩で歩き続けるのは無理そうなので、時間的に余裕があることだし途中で一息入れよう。

 この後は基本的に雪が繋がった尾根が続くが完全に雪が繋がらずに雪を求めて尾根の左右に乗り移ったり潅木と根曲がり竹の短い藪を突っ切ったりする。藪の濃さはそれほどでもないのでこのレベルが山頂まで続くのなら無雪期でも行けそうな感触だが、雪に藪が埋もれた場所と比較すると歩行速度は劇的に低下するのは致し方ない。尾根が痩せた急な登りの区間はブナではなくネズコが尾根上に立ち並んでいて長いこと雪が消えて藪漕ぎだったが、帰りには北側の残雪を伝って藪を大幅に回避できた。しかしこれも来週には不可能になるだろう。例年の残雪量だったらもっと楽ができたと思う。

1640m峰で再び雪が豊富になり藪が埋もれて気持ちがいい雪原が登場したので休憩。残りの標高差は200mを切っているが、この足の重さでは1時間はかかりそうだ。ひっくり返って休憩するために持ってきた銀マットを雪の上に広げて足を伸ばして寝転がってしばし昼寝。これで多少は気力、体力とも回復するだろう。天気は快晴で日差しは強いが思ったよりは気温は上がらず日向で休憩してちょうどいいくらいだった。

 休憩を終えて出発。この先はようやく雪が続くようになり面倒な迂回をせずに済んだ。植生はシラビソが混じるようになり高山の雰囲気だ。1720m峰で尾根が左に曲がるが好天で視界がいいので左手に高みが見えるので間違う心配は無い。

 更に傾斜が緩まりまばらなシラビソに覆われた尾根を登っていく。日差しが強くシラビソの木陰が涼しいので木の根元を繋いで歩いていく。日中の日差しで雪が腐ってもおかしくないが今年は既に高温の日が何日もあったので雪は良く締まって、登りなら日中でもスパッツが不要なくらいよく締まっていた。おかげで往路の足跡もほとんど残らないくらいで帰りはちょっと心細かったりした。

 広く緩やかな尾根を登りきると大坂森山山頂部に到着。明瞭な高まりは無く南北に長い平坦な場所だった。遊歩道を離れてからここまで人工物は気づかなかったが、地形図で三角点があるはずの場所にも人工物は皆無だった。積雪期に付けられた目印も山頂標識も無い山頂というのも久しぶりかもしれない。以前に大坂森山の登頂記録(山頂まで到達していなかったような?)をネットで見たことがあったが、検索結果は無雪期の1,2件だったような。なぜか山スキーなどの積雪期の記録は当時は発見できなかった。今回はネット検索はしていないのでここ数年の記録の有無は不明だが、ここを目指す登山者がごく少数であることは間違いないだろう。もし無雪期にしか登った人がいないのなら目印等が無いのも当然だ。山頂部は雪庇に覆われているのでおそらく積雪量は2m以上あるだろう。展望は雪庇がある東側は樹林が開けて薬師岳〜立山が大きく見えているが、それ以外の方向は背の高いシラビソ樹林で展望は良くない。

 シラビソの日影と日向の境目で休憩。日向だとちょっと暑いが日影だと寒いくらいの体感温度だった。風はほとんど無く上空は快晴。天気予報どおりのすばらしい天候で、おそらく立山室堂は大賑わいだろう。あそこに大型連休に行ったのは何年前だったか。

 帰りは往路を戻る。自分の往路の足跡はほとんど残っていないので、藪の微妙な迂回は往路とはかなり違っていたと思う。でも雪が残るのは主に北斜面なので北を迂回する回数の方がずっと多かった。

 雪が消えた遊歩道に出ると暑い! もう日が傾き始める時間帯だが日当たりがいい斜面ではまだまだ真昼間だ。遊歩道から林道に出る箇所の雪解け水の流れで水を3リットル補給、本日の幕営に使用する分だ。無人の林道を歩き、展望台でザックの中身を下ろして空っぽのザックで往路の荷物デポ地点まで行って適当にザックに詰めて展望台下の平地に降りて幕営。大型連休で雪の上以外でテントを張れたのは初めてかもしれない。今夜は背中の寒さに悩まされることはないだろう。もちろん、それを回避するためにエアーマット+銀マットを担いできたわけだが。

 西に傾いた日差しがテントを照らすがもう気温を上げるほどのパワーは無くテントの中は適度な気温だった。今回は水を得るのに雪をガスで溶かす必要は無いのでガスの量にはかなりの余裕が出たため、夜に寒くなってからは暖房用にも使用した。酒もつまみも余裕を持って担いできたので夕食のカロリーもたっぷり取ることができ、寝ている間の体温が上げられたので防寒着は不要なくらいだった。あと500gくらいは軽量化できただろうな。朝の冷え込みは弱く、早朝でも+6℃くらいあって冷え性の私でも手や足の冷えはほとんど無かった。昨年とは大違いだ。

 翌朝は朝3時半に起床予定が腕時計のアラーム音に気づかず4時半前に起床。まあ、今日は鉢伏山往復なのでのんびりでいいが、日中は気温上昇が予想されるので早めに高度を上げた方がお得である。

 昨日のこともあってアイゼン、ピッケルを持つか悩んだが、林道歩きと林道から離れて最初の急斜面を考慮して持って行くことにした。さて出番があるかどうか・・・。

 幕営地からダムへと続く眼下の林道へは廃道があり、傾いたコンクリート製階段でジグザグに下っていく。この斜面は潅木皆無の開けた場所で、まるで栽培しているかのようにフキノトウがびっしりと生えていた。

 林道に出るとすぐに有峰ダム。堰堤を渡って対岸へ進み林道小口川線へと入る。予想通り除雪はされておらず最初のカーブは雪の上を歩く。飛越トンネルへ続く林道は除雪済みだがトンネルまで除雪が終わっているかは不明だ。雪の上を歩いたのは出だしだけで、その後は林道上に雪があっても路肩付近だけは雪が消えている箇所がほとんどで、心配していた危険はほぼ無かった。西坂森谷を渡る手前だけが路肩まで雪に覆われていたが、アイゼンを使うほどの傾斜ではなく、すんなり通過できた。ただし落石も混じっていて、ここだけはあまりのんびり歩きたくない場所だった。

 橋を渡ってすぐに林道をショートカットしようかとも思ったが傾斜が急そうなので往路では林道を素直に歩いた(帰りはショートカット)。左に大きくヘアピンカーブしてしばらく歩き、右に大きくヘアピンカーブする箇所で斜面に取り付いてショートカット。ここをカットすると大幅に歩く距離が短縮できる。斜面はまだ残雪が残っているが心もとない厚さしかない。緩やかに登るとどんどん雪が減ってきて浅い谷にしか残っていないので谷の中を登るが、とうとうそこも雪が消えて笹の斜面を上がっていく。うまい具合に笹の濃さはそれほどではないので大きな支障はないが、これがどこまで続いてくれるのやら。

 コンクリートの壁を越えると林道に飛び出すが、まだ雪は少なく見上げる斜面にもほとんど雪が無い。このまま林道を歩いて西側の谷に雪が残っていることを期待しようかとも思ったが、常識的には今いる東斜面の方が雪が残っている確率は高いだろうと判断、このまままっすぐ登ることにした。いや、正確には残雪を求めて少し右寄りにルートを変えてトラバース気味に登っていく。しかし標高1450m付近から斜面の傾斜がきつくなるが、そこから上は完全に雪が消えて藪が出ているため、標高1440m付近で今度は左にルートを変えてトラバース開始。ここは傾斜がきついこともあって雪が消えてほとんど藪が出てしまっているが、短い雪田横断に備えて今回唯一アイゼンを装着。短距離ながら根曲がり灌木や笹藪を突っ切って西側に見えている残雪地帯を目指す。浅い谷地形に達すると厚さが薄い残雪にありつく。あと1週間早ければさっきの藪も雪がつながっていただろうなぁ。今年は春の雪解けが異常に早かったので、例年なら大型連休でも藪は回避できるのだろう。

 標高1450mを越えて傾斜が緩むと徐々に雪が増えてきて一安心。この先は標高もあるのでおそらく雪が途切れることはないだろう。1500m肩に出ると北側のピークの南斜面はかなり白さが残っていて、やっと藪から解放される。もうアイゼンは不要な傾斜なので脱いでザックの中へ。

 1560m峰までは所々で藪が出かけていたが左右に迂回して回避可能。尾根直上はネズコが目立つ。背が高い常緑樹のネズコは大きな日陰を作ってくれるので、今日のような好天で暑い日には助かる存在。

 このまま尾根を直進すると1628m峰に登って1600m鞍部へ下るという無駄なアップダウンが生じるので、途中で尾根西側の谷に下ってピークを迂回することにした。見下ろす谷も雪で埋もれて藪は全く見えないが、できるだけ尾根との標高差が無くなるまで進んでから谷に入ることにしてまだ尾根を進む。

 1560m峰の西側斜面をトラバースし、その先の鞍部で谷に下る。周囲は雪がべったり付いて藪は全く見えず、もうどこを進んでも藪の心配はなさそうだ。そのまま谷の中を上がっていき1600m鞍部に達する前に左手に顕著な谷が登場。1702m南鞍部に突き上げる谷で、傾斜は適度で立木も少なく歩きやすそうなのでそこを登ることに。この時期の雪質は最高でアイゼン不要な固さだが潜ることも無くスパッツを着用しなくても登山靴の中に雪が入ることもない。今日のような暑い日にはスパッツ無しだと足元が涼しいのでいいことだ。

 1702m峰南側の1680m鞍部に達すると角が丸まった雪庇が半円状に囲んでいた。よじ登って1702m峰へ。ここまでアイゼンもピッケルも出番が1回しかなかったが、この先はもう出番があると思えないのでデポすることにした。ここまで登ってようやく周囲の展望が開けるようになり、東には立山から薬師岳、南には笠ヶ岳、乗鞍岳、木曾御嶽、西側には先週登った東笠山と西笠山が見えていた。西笠山はだいぶ藪が出て黒く見える筋ができていた。まあ、それでも大半の斜面はまだ白いので藪を迂回して山頂に立てるだろう。

 これまでは背の高いブナや尾根上のネズコが中心だったが、がこの先は植生が変わって立木が一気に減ってシラビソが点在する程度に。尾根は単純な登り一辺倒ではなく細かなピークが連続し、簡単に巻ける傾斜の場合は巻くが側面の傾斜がある程度きつい場合は素直に尾根上を進む。1760m峰の北側はシラビソが濃く木を避けてジグザグに下っていく。

 1730m鞍部は東西に谷筋が伸びていたが東側の谷は急傾斜で落ち込んでいた。登り返しは疎らにシラビソが立つ広い斜面で日当たり良好すぎて暑い! もちろんどこも一面残雪に覆われて藪は皆無だ。

 山頂が近づき傾斜が緩むと開けた平坦な場所に標柱のような枯れた木の棒が立っているのが見えた。まさかと思って近づくと予想外の山頂標識が。ここは夏道は無いのでは? 実は下山後にネット検索したら有峰林道小口川線から夏道が存在していたのであった。知らずにわざわざ残雪期に登ったのはちょっと失敗だったかも。まあ、でも林道の通行料金はかからなかったし、通常とは違うルートで楽しめたのでいいか。

 山頂は広い平坦地でシラビソが点在することもあって開けている割には周囲の展望が無い。平坦地の縁まで移動すると大展望が開ける。大型連休でこの好天なので立山室堂など有名どころは大混雑だろうが、ここは林道開通前で人間社会とは隔絶された静かな世界。やはりこんな場所の方が落ち着いていい。車の音も全く聞こえない。

 背の低いシラビソの日陰で銀マットを敷いて休憩。これから下山するが、やる気になればおそらく時間的には今日中に亀谷ゲートまで下ることは可能だろうが、この気温では日中の林道歩きは暑すぎて汗だくになるのは間違いない。ラジオの天気予報では富山市の予想最高気温は29℃。かなり暑い。これなら山の上でもう1泊して涼しい早朝に下るのが得策だろう。その方が飯も減って帰りのザックが軽くなるし。

 休憩を終えて出発。基本的には往路を戻るが、往路で登ってきた1702m峰南鞍部から東へ落ちる谷へは入り損ねてしまい、1790m峰から南に落ちる谷を誤認してしまった。真面目に磁石を見れば間違いはすぐ分かっただろうに・・・。途中で間違いに気づいたが、どうせ往路の谷に合流するので(往路で歩いた箇所よりも下がった場所かもしれないが)、そのまま適当に下っていく。その谷に到着したが往路の記憶には無い風景で、やはり往路で尾根から谷に下った地点よりも南側のようだ。面倒だが尾根に登り返す必要があり、目の前の急斜面をジグザグによじ登る。傾斜が緩んで南に回り込むと往路で見た風景で、無事に尾根上に復帰した。あとはほぼ往路と同じルートで林道へ。これで今回の計画の核心部はすべて完了した。

 橋を渡り林道全面が雪に埋もれた斜面を横断した先の雪が消えた日陰の路肩で休憩。日向は暑すぎて休憩には適さない。この標高だともうシラビソやネズコは無く落葉したブナばかりなので木陰は無い。

 有峰ダムを越えてテントへ戻るが、ここは木陰皆無で暑すぎて日中を過ごせる場所ではないし、水の補給も必要なので昨日の大坂森山への起点となった遊歩道入口まで足を延ばして休憩することにした。ここは建物があるのでその日陰で休めるし水も補給できる。ザックに銀マットと水の容器を入れて階段を上がり無人の林道を歩いて雪囲いされた建物の日陰に銀マットを敷いて昼寝。大型連休でもここは無人のまま。例年だと林道開通は6月初め。まだ1か月以上ある。

 日差しは強いものの日陰の気温はじっとし続けるには寒いくらいで、時折日向に移動して体を温めた。やや風が強いことも風冷効果で寒さを感じる要因か。あまり風が強くなると明日のテント撤収で苦労するかもなぁ。ウトウトしながら今年初めてツツドリの鳴き声に気付いた。こいつを聞くと初夏を感じる頃だが、今年は確かにもう初夏の気温だなぁ。

 日が西に傾いてきて暑さが和らいでから水を汲んでテントに移動した。今日も人に会うことは無かった。夜中も風が吹いていたがテントが揺さぶられるほどではなく、適度な強さでテントの結露を防止するのに役立ってくれた。

 翌朝も快晴。今日は長い林道を歩いて下界に下るだけなので気楽である。涼しい時間帯に体を動かして汗をかかないようにするためにまだ薄暗い中でテントをたたんで出発。少し風は強いが常に吹いているわけではなく、止み間を狙って撤収した。単独行の場合は強風だとテントの設営/撤収が面倒だ。食料をほぼ食い尽くしたのでザックは軽くなった。今回ほぼ出番が無かったアイゼンとピッケルが無かったらもっと軽くなったのになぁ。

 帰りの林道は往路では見られなかった雪の塊が路上に落ちていたりでまだ雪崩の危険があるために、除雪が終わっているのに林道を開通させないのであろう。さすがに下り坂しかないので帰りは楽で、休憩なしでゲートまで歩けた。帰りも林道を通行する関係車両は皆無であった。

 ゲートに到着し、林道脇の日陰になりそうな場所に駐車したマイカーのドアを開けると中は寒いくらい。ここは谷間で朝の時間帯はまだ日差しが無いからだ。温泉に入る前だが近くの小沢でタオルを洗濯して体を拭いて3日分の汗を拭う。買い物もあるので温泉は上市町の「アルプスの湯」まで足を延ばすことにして車を走らせた。

 

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